シェリー村から100キロ程離れたヴァレ州のサルヴァン村、ここはスキー場を有するレジャースポットであるが、スキーシーズンはまだ到来しておらず、この時期の村は静かなものであった。
そんなサルヴァン村が時期外れの喧噪に包まれていた。
爆発音に続き、3つのスキー小屋が燃え上がり、村の中を何台もの消防車が駆け抜ける事態となっていたのだ。
火災があった3つの建物からは、やはり儀式用の僧衣をまとった計25人分の死体が発見された。
だが、死因はすぐにはわからなかった。シェリー村のものとは違い、こちらの死体はほとんどが火災によって性別の区別さえつかないほど焼けこげており、死因の特定は困難を極めた。
建物から22口径の拳銃が発見されたことで、一時は銃殺によるものとも考えられたが、どの死体にも銃痕は認められなかった。
しばらくして、死体から皮下注射の痕が発見され、ようやく死因が判明する。彼らは薬物によって眠らされたうえで、爆発で発生した炎に飲まれ焼死していたのだ。
やはり、宗教組織が村で活動していたことは知られておらず、事件の不可解さに捜査陣は困惑していた。
だが、シェリー村の事件が伝えられたことで、二つの事件に関連性があることがわかった。
さらに現場検証が進められ、二つの村で明らかになったことを照らし合わせていくうちに、いくつかの事実が浮かび上がってきた。
それぞれの建物から爆破装置が発見され、この装置の爆発が生んだ火災であったことが判明したのだ。だが、シェリー村の爆破装置のいくつかは起爆せず、そのため納屋のみが爆発していたことがわかった。
この爆破装置は電話線につながれており、電話をかけることで起爆出来る遠隔操作が可能なタイプであった。
なぜこのような事件が起きたのか、まだ「太陽寺院」の名前すら明らかになっていなかったこの時には、多くの謎に包まれていた。