報道機関がこの事件のニュースで奔走するなか、スイスの新聞社の元に犯行声明と思われる封書が届けられた。
その封書の中には、「未来への旅立ち」「正義の士たちへ」「薔薇十字」「叡智の声に耳をかたむけることができる人々への最後のメッセージ」などと題された4つの文章が入れられており、教団の教義や集団自殺に至った経緯なども綴られていた。
彼等の教義によると、世界は「薔薇十字の33人の賢者」によって導かれているのだという。
賢者達は人類の進化をコントロールしており、人類の危機を幾度も救ってきた。そして、教団に所属する人々は賢者たちの言葉を伝え聞くことの出来る選ばれた人間たちなのだという。
だが、人間は腐敗し、賢者達の言葉に耳を貸さなくなってしまい、あまりにひどい自然破壊を行うようになった。その報いである自然からの逆襲が始まっており、その流れを留めることは出来ず、人間は近く滅びる運命にある。
そのため、すでに手遅れになったこの世に別れを告げ、シリウス星に旅立つことを決めたのだという。
また、文章の中には国家権力に対する抗議文も含まれていた。
教団は警察などから度重なる圧力と妨害を受けており、地上での計画はまだ道半ばであったが、その計画を切り上げ、地上と別れを告げなければならなくなった。そして、その旅立ちの過程で邪魔となる裏切り者を抹殺する必要があったのだという。
他にも、教団の教義に賛同できる叡智あるものは、今からでもこの旅路へ参加するよう求めるものや、フランスの外務大臣に対し、教団の指導者のひとり、ディ・マンブロの妻がパスポートの発行を断れたことに対する抗議文なども含まれていた。
裏切り者とは、カナダで凄惨な方法で殺害されていたデュトワ家の3人を指していると思われた。
抗議の対象となった国家権力とは、カナダ警察のことを指していると考えられた。実はカナダの警察は事件が起きる1年以上前から「太陽寺院」の危険性を把握しており、その活動を監視していたのであった。