この2つのケースに共通しているのは、どちらも加害者に殺人を犯すだけの理由が存在しないということである。
これは夢遊病者の殺人で全般的に共通する点だという。その他にも、夢の中で人や怪物、災害などに襲われる。意識が戻り自分のしたことを知ると、素直に罪を認め隠蔽しようとしたりしない。身近にある凶器が使われる、なども挙げられる。
夢遊病の状態にある人間は、全く違った世界を生きているような状況にある。そのため、殺人に及ぶだけの因果関係は見いだせないのである。
夢遊病はまだ不明な点も多く、過度の疲労や睡眠不足が続いた時に発症しやすいことなどはわかっているが、なぜこのような事が起きるのかは、まだ明らかになっていない点が多い。
ただ、普通の夢で言われるのと同じように、抑圧されている願望や葛藤などが関係する場合もあるとされている。
ジョー=アンのケースでは、家庭環境に関連するある葛藤が関係したのではないかと言われている。事件発生当時、両親は離婚間際の状況にあった。だからと言って、彼女は両親を殺してしまいたいという願望を持っていたわけではない。むしろ、彼女は家族の事が大好きで、いつまでも一緒にいたいと考えていた。
だが、そうした思いは、離婚で家族がバラバラになってしまうのではないかという不安を生んだ。その不安は両親の仲が悪化し、離婚が現実味をましていくに従って大きくなっていく。
彼女はこの状況をなんとかしなければと思っていた。その渦中で、巨大化した不安が彼女の夢の中で化け物のような男の姿で現れ、家族を襲おうとする。彼女は姿を変えた家族の危機を止めようとして、悲劇が起こってしまった。
あくまでも仮説であるが、このように考えられている。