議会の承認を受けてドレフュスの有罪は確固たるものになった。だれもがそう思った。しかし、これに公然と反論した男がいた。
軍籍を剥奪されたピカールである。守るべき居場所を失ったことでピカールは事件の追及に全てを賭ける覚悟を決めていた。
ピカールの反論はオロール紙上で公開状として掲載された。カベニャックが根拠としたドレフュスの自白を完全なでっち上げとし、「D」もドレフュスとする根拠はなく、違う人物のことであるとした。そして、ゾラ同様に裁判で証言するとまで述べた。
ピカールは告訴され、収容所に送られることになった。ピカールにとってこのような事態など覚悟のうえだった。
ドレフュスの無実を証明する証拠を握っていながら、自ら行動に移せなかったことをピカールは後悔してもいた。その後悔を少し晴らせたような気分で収容所にむかった。
このピカールの行動に続こうとする人物がいた。ベルチュリスという名の判事で、当初からドレフュスが有罪となった判決に疑いを抱いていた。またピカールの人間性にも惹かれていた人物だった。
ベルチュリスはピカールの身を挺した行動に感化され、独自の方法で捜査を開始することにした。