キティ・ジェノヴィーズを殺害した犯人が明らかになったのは、事件から6日後、ある強盗事件の容疑者としてウィンストン・モースリーという名の男が逮捕されたためだった。
モースリーは警察の事情聴取で、この強盗事件の他にもキティ・ジェノヴィーズを含む4件の殺人や強盗を行っていたことを自供したのだ。
モースリーは深夜の街で、1人で歩いている人間を標的として、男女を問わず犯行を繰り返していた。
男であればナイフを突きつけ、痛めつけた上で金を脅し取り、女性であればナイフで刺し、時に強姦まで行っていた。
だが、モースリーはいわゆる社会のはみだし者ではなかった。ビジネス機器のオペレーターの職に従事し、良い収入を得ている男で、妻子も持っていた。つまり、こうした犯行は、金を得る事が目的であったり、社会に対する不満によるものではなかったのだ。
モースリーは深夜の街で、人間を「狩る」ことに無情の喜びを見いだしていた。ただそれだけの理由で、犯行を繰り返していた。
モースリーが異常者であることは明らかであった。だが、この事件で最も特筆すべき点はそうしたモースリーの異常性にあるのではない。この事件で注目すべき点はジェノヴィーズが殺害された時の状況にある。