1964年3月13日、ニューヨークのクイーンズ地区、バーでの勤務を終えてアパートの自室に戻ろうとしていた28歳の女性キティ・ジェノヴィーズが、暴漢にナイフで襲われ死亡した。
今回紹介する事件は、ある一面だけから見れば、この短い説明で全てを言い終えてしまうだろう。実際にこの事件が最初に新聞に取り上げられた時は、紙面の隅にわずか4段落ほどで書かれたありふれた殺人事件という扱いに過ぎなかった。
だが、この事件が起きた状況が明らかになるにつれ、ニューヨークで暮らす人々に、大きな問題をつきつける特別な事件へと変貌していった。
さらに、事件を分析しようとする学者なども多数現れ、研究材料として取り上げられるようになっていく。
その研究の結果、人間の習性に関するある驚くべき事実が明らかになった。
事件の状況はどのようなもので、事件の背後には何があったのか。今回はその二つに焦点を当て、事件に迫っていきたいと思う。