深夜にもかかわらずエヴァンジェリスタが犯人を事務所に招き入れていたことから、警察は次に、エヴァンジェリスタと個人的に近しい人物や仕事に関連する人物などに対する捜査を行った。
すると、ウンベルト・テッキオという名の男が捜査線上に浮上した。テッキオは事件の前の晩に、家の建築代金を支払うため、ベニーの元を訪れていたのだ。
テッキオには前妻の兄を刺し殺した前科があり、札付きのワルとして知られた男であった。
さらに、前妻がテッキオと住んでいた家の所有権を得て新しい男と結婚すると、二人に対し脅迫を行っており、後に前妻の夫は射殺された姿で発見されていた(警察の調査では自殺とされた)。
さらに、テッキオが所属するイタリア移民のコミュニティーを中心に聞き取り調査を進めると、新聞配達の少年が事件発生直後の午前5時ごろに、エヴァンジェリスタの家の玄関にいるテッキオの姿を見ていたことがわかった。
テッキオは明らかに怪しかった。警察がテッキオの家を調べてみると、斧やナイフ、洗われたばかりの靴が発見された。
しかし、逮捕するにはまだ十分な証拠が集まっていなかった。警察はテッキオを見たとされる新聞配達の少年を捜したが、一向に見つからなかった。ようやく少年を知る人物に聞き取りを行うと少年は死亡したとのことだった。
警察は他の証言者になりえる人物の確保に動いた。そして、テッキオの同居人アンジェロ・デポリの尋問を行った。しかし、警察が何を聞いてもデポリは押し黙ったままで、何も答えようとしなかった。
業を煮やした警察はデポリが不法滞在の身であったことを追求し、喋らせようとするが、デポリは何も話さなかった。結局、警察はデポリを国外退去させた。
だが、これは重大なミスであった。デポリを国外退去させたことで、重要な証言者になりえる人物をみすみす手の届かない所に追いやってしまったのだ。