事件の発生現場であるサリー州の警察では、ある計画が進められていた。それは、この状況を事件解決に結びつけようとする計画だった。
これだけ有名となった事件であれば、捜査に協力してくれる相当な数の有志を集められるのではないか、もし、これが実現すればアガサが失踪したニューランズ・コーナーで重点的な捜索活動を行えると見込まれたのだ。
現に、事件が発生してからすぐに、警察の元には大量の情報提供の手紙や電話などが届いており、可能性は十二分にあった。
警察がニューランズ・コーナーにこだわっていたのにもわけがあった。
車の中にハンドバックが残されていなかったことから、アガサは財布を所持している可能性が高いと考えられていた。しかし、財布の中には数ポンドしか入っていないはずで、銀行預金も警察によって停止されていた。
このことから、事件発生現場から離れた場所にいくことは出来ないはずだと考えられていた。
有志による大捜索隊を募り、当地一帯を捜索出来ればなんらかの発見があるのではないかと期待されたのだ。
警察は新聞を使った告知を行い、協力する意思のある者は、ニューランズ・コーナーに集まるよう呼びかけた。
アガサ失踪から8日目、その日は雨だったにもかかわらず、ニューランズ・コーナーには大勢の人間が集まった。新聞の報道によるとその数は1万人以上にもなったと言われている。
イベント気分で参加したものから、この手でアガサを発見しようと真剣な気持ちで参加したものまで、参加に対する意気込みはバラバラであったが、これだけの有志が集まったことは警察にとって非常に心強いことだった。
ニューランズ・コーナーの一帯はしらみつぶしに捜索されることになった。
しかし、この大捜索も実を結ばなかった。なんら手がかりも得られないまま解散することとなった。