一方、この大捜索が行われた日、ニューランズ・コーナーから遠く離れたノースヨークシャー州の警察のもとにある有力な情報が寄せられていた。
それは、ハロゲートにあるホテルの宿泊客の中にアガサ・クリスティーと思われる女性がいるとの情報だった。
地元警察は裏付けを取るため、調査をおこなった。その女性はテレサ・ニールと名乗っており、事件の発生した翌日からハロゲートにある高級ホテル、ハイドロ・パシックホテルに宿泊していた。
テレサ・ニールは本を読んだり、他の客とおしゃべりをしたり、散歩をしたりと普通の宿泊客と何らかわらない様子で、アガサ失踪に関する記事が載った新聞も普通に読んでいたという。
テレサ・ニールは奇妙な広告を新聞に出していたことも明らかになった。それは「最近まで南アフリカにいたテレサ・ニールの友人及び知人の方はご連絡を」と書かれたもので、私書箱あての連絡先が記されたものだった。
12月14日、身元確認のため、警察はアーチボルトを連れハイドロ・パシックホテルを訪れた。アーチボルトはテレサ・ニールが確かにアガサ・クリスティーであったことを確認した。
この時の様子を見ていたホテルの従業員によると、アガサはアーチボルトのことを見たことはあるが、誰だか思い出せない様子で見つめていたと語っている。