アガサ発見のニュースはすぐに新聞記者も知ることとなり、ホテルの周囲は記者達で埋め尽くされる状態になった。
アーチボルトは記者達から記者会見を開くよう盛んに要請された。
この要請を受けて開かれた会見で、アーチボルトはアガサが完全に記憶喪失の状態で、自分が誰だかすらわかっていない状況にあること、すぐに精神科医に見てもらう予定であることを語った。
しかし、この会見は記者達を満足させるものではなかった。記憶喪失だとすると不可解な点があったからだ。
アガサが名乗っていたテレサ・ニールの名は、夫の愛人ナンシー・ニールの名と関係があるのではないか。記憶喪失の人間が、失踪現場から320キロも離れたハロゲートにどうやって辿りつけたのか。
そんな疑問が記事の形で投げかけられた。
また、アガサが発見当初に来ていた衣服や、所持品にも謎があった。アガサは失踪当時、緑色のニットスカートと灰色のカーディガンというアガサらしい落ち着いた服装だった。それが、発見時は流行服を身にまとっていた。
さらに、アガサは数ポンドしか持っていないはずなのに、発見された時に300ポンドもの金を持っていた。
不可解な点がいくつもあったのである。