しばらくして行われた精神科医の診察では、アガサは記憶喪失であったと診断された。
しかし、それでも加熱した報道は収まらず、記憶喪失だとする診断にも懐疑的な意見が多く、やはり、失踪は宣伝目的作為的なものだったのではないかとする意見は、根強く残る事となった。
そのため、この事件で世間が抱いたアガサの印象は良いものではなかった。多額の税金が捜査に使われたはずなので、アガサはその費用を負担するべきだとまで言われた(実際には、たいして費用はかかっていなかったことが後に判明する)。
失踪は宣伝目的とする見方にも信憑性があったことは事実であった。
この事件の後に出版された著作「ビッグ4」は、アガサ自身も納得いかない出来だったと述懐している作品だったが、これが8500部も売れた(「アクロイド殺し」は3000部を超える程度)。
これに続く2作も「アクロイド殺し」の2倍以上売れ、以後はベストセラー作家として、その売れ行きは飛躍的に伸びていくのであった。