脅迫だけではなく、被害者まで出てしまったことで、スコットランドヤードは早急に事件を解決する必要に迫られた。
そこで、フレミングは自動支払機に罠を張る2つの作戦を展開した。ひとつは自動支払機へのカメラの設置、ふたつめは犯人のキャッシュカードが使われた時に限り、カードが返却されないようにプログラムに手を加える作戦だった。
しかし、このどちらも失敗に終わってしまう。カメラを設置した自動支払機は犯人によって使用されたのだが、犯人はフルフェイスのヘルメットを被っていたため、人相を特定することは出来なかった。
また、キャッシュカードの回収には成功したのだが、犯人の指紋は検出されなかった。犯人は手袋をした上でキャッシュカードを使用していたのだ。
ただし、キャッシュカードが回収されたことで、犯人から脅迫した金を手にする手段を奪うことには成功した。
犯人は再び対抗措置に出た。青酸カリが混入されたベビーフードが撒かれ始めるようになったのだ。
ついに、犯人は人命を奪いかねない手段を実行に移しだした。混乱を避けるため、これまで事件は公表されていなかったが、これで公表せざるを得ない事態に追い込まれた。
この発表にイギリス中が大騒ぎとなった。一斉にべビーフードは回収され、イギリス中のスーパーマーケットの棚から商品が消えた。回収されたベビーフードは計1億個以上に上った。
さらに、事件の公表は予期しない事態を招いた。この手口をまねた企業の脅迫が相次ぎ、その数は1000件あまりにも上った。それらを一つ一つ調べる作業のため、捜査は大混乱の状態に陥った。