ランスキーとシーゲルは相談役におさまり、実際にビジネスを執行するのはレプケとアナスタシアということになった。バカルターは社長に、アナスタシアは副社長に就任した。
「マーダーインク」が設立されると、その分野で優秀な人材が集められ、社員として登用された。
依頼はコミッション経由でもたらされるものから、直接持ち込まれるものまで、多岐にわたり、その依頼内容も様々だった。
「商売敵を消して欲しい」
「裁判にかけられているが、どうにも分が悪い。陪審員を入れ替えたいので何人か殺してほしい」
「やばいブツを取り引きしているところをある男に見られたから依頼しに来た」
こうした依頼が舞い込むと、まず社長のレプケと副社長のアナスタシアによる審査が行われた。
コミッションのルールに反しないか、マフィア間の抗争に発展するようなことにならないか、警察に捕まる危険性はどのくらいかなど、依頼は様々な視点から分析され、審査を通った依頼は社員の元に案件として渡る仕組みになっていた。
こうした厳しい審査だけではなく、社内には徹底したルールも存在した。殺して良いのは案件の対象者だけとして、絶対にそれ以外の民間人を巻き添えにしてはならないと定められていた。
このような仕組みがあったこともあり、マーダーインクはコミッションにとっても非常に都合の良い組織となった。
コミッションで決定される重要事項の中には、コミッションのルールを破った人間に対する制裁なども含まれていた。
そうした制裁では殺人が行われることもあり、マーダーインクはコミッションの制裁実行部隊としての側面も持つようになっていったのである。