社員達はそれぞれ、得意な仕事道具を使って仕事に臨んだ。
優秀な社員の1人、エイブ・“キッドツイスト”・レルズは、アイスピックでの仕事を得意とし、標的の心臓を一突きで貫き、いくつもの依頼をこなしていった。
ヴィート・グリーノは標的の頭を銃で吹き飛ばすのが得意で、標的は「チキン」と呼称されていたことから、「チキンヘッド」と呼ばれていた。
「マーダーインク」で最も優秀な社員は、ハリー・“ピッツバーグ・フィル”・シュトラウスだった。
シュトラウスはオールマイティの殺し屋で溺死や生き埋めなどの、武器を使わない殺しに始まり、ナイフやアイスピック、銃などあらゆる武器に精通し、案件ごとに道具を使い分け、最も多くの依頼をこなしていった。
こうした花形社員の他にも裏方の仕事で会社を支えた社員もいた。依頼が審査を通ると、まず動く事になるのは、「探り役」の人間だった。
彼等は標的がどのような行動パターンや習慣を持っているかを調べ上げ、実行役がどのタイミングで動けば良いかを綿密に調べ上げた。
そして、「探り役」が調べ上げた情報を元に「実行役」が標的をしとめ、最後に「証拠隠滅役」が登場する。
「マーダーインク」が請け負うのは対象者を殺害するだけではなく、警察に露見しないよう全ての証拠を消しさることも依頼内容に含まれていた。
標的の遺体や銃の薬莢、逃走に使われた車など、あとで発見された際に問題になりそうなものを「証拠隠滅役」が全て片付けていくのだ。
こうした優秀な社員たちの働きもあって、マーダーインクは企業として着々と業績を伸ばしていった。
社員たちに支払われる給料も高額なものであった。彼等は年収にして1万2000ドル(現在の日本円で約18000万円ほど)も得ていたと言われている。