ルチアーノは次に、政治家に賄賂を贈り、国家権力が対マフィア活動に動かないよう地固めを行った。
こうして盤石な足場を築き、ルチアーノはさらに事業を拡大していく。
国内では食肉の加工業や運送業などのまっとうな事業も始め、コミッションの方では海外のカジノ事業を展開するなど、ルチアーノが関与する事業は世界規模のものになっていった。
この頃のルチアーノ・ファミリーの収益は年に20億ドル(現在の約315億ドル、日本円にして約2.5兆円相当)にも上ったと言われている。
こうした事業展開の中で生まれたのが「マーダーインク」である。このビジネスを企画したのは、ルイス・“レプケ”・バカルターであった。
ルチアーノ・ファミリーの元には様々な仕事の相談がもちこまれていたが、需要が多いにも関わらず、人材不足のため、さばききれなくなっていたのが殺人の依頼だった。
レプケはこの問題を解決すべく、仲間に相談を持ちかけた。まず相談を持ちかけたのが、ファミリーの中で、殺人に関しては右に出る者がいないと言われたアルバート・アナスタシアであった。
アナスタシアはレプケの話を聞き、すぐに同意した。さらに、今やマフィア界の重鎮となったマイヤー・ランスキーとベンジャミン・シーゲルも加わり、コミッションの認可を経て「マーダーインク」は設立されることとなった(当時は「マーダーインク」と呼ばれていたわけでは無く、この名前は後にマスコミによって命名されたもの)。