このように政府筋の機関とも行動を共にした地下組織ネットワークが、政界などとも深い関係を持っていたことは相当に信憑性の高い話だと考えられていて、こうしたネットワークは「グラディオ」が生まれるもっと古くから存在していたともいわれている。
また、その全容は不明ながら、こうした地下組織ネットワークに「太陽寺院」も参加しており、その活動の一端を担っていた可能性は高いのだという。
だが、教団の規模などからみても、それほど大きな役割を果たせたとは考えにくく、参加していたとしても下部的な役割に留まっていたと見られている。
ここで想い起こされるのが「太陽寺院」の教義である。
彼らの教義では全ての指示は「シナーキー」や「薔薇十字の賢者たち」と呼ばれる上部組織から与えられたものだとする話があったが、それは地下組織ネットワークを指していたとも考えられるのである。
もしそうだとしたら「太陽寺院」は邪魔な存在になっていたはずである。
見てきたように、微罪とはいえ指導者であるジュレは裁判にかけられ、ディ・マンブロは信者から訴訟を起こされる寸前の状態となり、さらにはいくつかの捜査機関にマークされる存在にまでなっていた。
つまり、「太陽寺院」の全容が明るみに出される可能性があり、それは地下組織のネットワークにとって問題があった。だから教団はまるごと消されたのだとも考えられるのだ。
それは、一連の事件全てがこの地下組織のネットワークによって行われたことを意味するのである。
もちろん、あくまでも憶測の域を出ない話である。だが、集団死亡事件を起こす直前に、わざわざ危険をおかしてまでデュトワ一家などが殺されていた事などもこの説で説明できてしまうため、妙な信憑性も感じられてしまう。