教団の崩壊がもはや回避できない状態となったなかで、ディ・マンブロとジュレは不穏な行動をとりはじめる。
カナダで銃の不法所持が発覚したのには、実は大がかりなカナダ政府に対する脅迫が関係していた。
何名かの大臣宛に「Q-37」というテロ組織を名乗る人物から「これ以上、インディアンに対する優遇措置が続くようならば、インディアンのコロニーを爆破する」との脅迫電話がかかってきていたのだ。
これに対する大規模な捜査を行っている過程で、ジュレと信者たちの銃の不法所持が発覚したのであった。
だが、「Q-37」とジュレの関係を明確に出来ず、前述の通りわずかな罰金刑で保釈されることになった。結局のところ「Q-37」の実態は不明で、「太陽寺院」との関係も判明しなかった。
ディ・マンブロはどのような命令にも従う熱狂的な信者達で構成された暗殺部隊を組織し、教団にとって裏切り者だと考えられた人物たちを殺害する。
それがシェリー村で殺害されていたアルベール・ジャコビーノやカナダで無惨な姿で発見されたデュトワ一家であった。
ジャコビーノは教団の出資者であったが、教団の欺瞞があきらかになってからはディ・マンブロを批判するようになり、出資した資金の返済を迫っていた。そのため裏切り者として殺害されたと見られている。
デュトワ一家の場合も同様であった。夫のアントニオは10代の頃から20年近く教団に入信していた古参の信者であったが、その手先の器用さもあって、様々な仕事を任されていた。その中で最も重要な仕事はあの奇跡の仕掛けを作り出したことであった。
アントニオが奇跡に仕掛けがあることを暴露した犯人だと考えられたため、殺されたのだと目されている。
妻のニッキーも教団内で重要な役割を担っていた。彼女は裁縫の仕事を任されていたため、信者の氏名や体のサイズが記載されたデータをもっており、さらに「宇宙の子」の世話係でもあった。
二人は子供が出来たことを期に、普通の社会に戻る決心をして教団を脱会していた。彼等は知りすぎていた存在であり、同時に裏切り者だとも考えられていたようだ。
この一連の犯行を行った暗殺部隊は3名で構成されていたが、そのうちの1人ジョエル・エジュールは教団でアントニオと20年来のつきあいがあり、親友と呼べる間柄の男だった。
隣の爆破された家で死亡していた二人は、この暗殺部隊のエジュールを除く2名のものであった。