「太陽寺院」の信者達には徹底した行動規則が課せられていた。
朝はまだ日が上らないうちから教団に集まり、僧衣を身につけ瞑想修行が行われた。朝食を経たあと、在野の信者たちは一旦普通の生活に戻り、職場へと向かう。
勤務を終えた後に再び教団に向かい、農作業や建物の建造などの重労働を課せられた。
その後、瞑想の時間を経て、ディ・マンブロやジュレの説法が行われるという生活を送っていた。
信者達が家に着くころには深夜になっていることも度々あったが、彼等は帰宅後に指導者達が語った話をノートなどに書き写して頭にたたき込み、そして翌朝の早朝には再び教団に集合するのである。
その他にも教団から急な召集がかかり、仕事を放り出してでも参加しなければならない事もたびたびあったのだという。
信者達はこうした厳しい2重生活を徹底して守らされていたが、そこまでして教団の活動にのめり込んでいったのは、教団を信奉した人々にとっては魅惑的な教義や奇跡、そして教団に従えば世界の終末から逃れられるという危機意識にあった。
指導者たちは宇宙の真理を信者達に伝え、その真理を裏付けるような様々な奇跡を起こして見せた。
祈りによって誰も触れていない教会の扉を開き、宙に聖杯を出現させた。時には「宇宙の長」という、ローブを身にまとった人類よりも高等な存在まで現われることまであったのだという。
「宇宙の長」は輝く剣を振りかざし、普通の信者には解読できないようなメッセージを床に記し、それを指導者たちが解読することで信者達に宇宙の真理を伝えていった。
いつの頃からからか、こうした神秘的な儀式の中で「人類の終末」についての話が語られるようになっていった。
「『ヨハネの黙示録』で語られた終わりの日はもうすぐやってくる。だが、恐れることはない。我々は選ばれた人間であり、その日が来ても生き延びることが出来る」
こうした奇跡や救済教義に信憑性を与える裏付けになるのが、テンプル騎士団や薔薇十字団などの歴史的な背景と神秘性を併せ持つ存在であった。
これらを繰り返し語られた信者達は自分達が「選ばれた人間」であるという特別な感覚を抱くようになり、教団から離れられなくなっていった。