事件発生からそれほど時間も経過しておらず、湿った砂地に残されていたこともあって、足跡はまだ綺麗な状態に保たれていた。
その足跡は靴下を履いた状態でつけられたものだった。靴を履いた状態であれば靴底の模様を手がかりとすることも出来るが、靴下ではそれも困難であった。
レドリュは拡大鏡を使ってその足跡の確認を行った。すると、右足のくるぶしに一部欠けた部分があることが分かった。
この痕跡を発見して、レドリュは一瞬にして血の気が引くような衝撃に襲われた。自分の靴を脱ぎ、犯人のものと思われる足跡の横に自分の足跡をつけた。
2つの足跡を見比べ、レドリュは激しく困惑した。
レドリュは過去に犯人を追跡中に怪我をして、右足の踵を一部失っていた。まさかとは思いながらも足跡を比較すると、完璧なまでに一致してしまったのである。
さらに、今朝、自分の靴下がいつの間にか濡れていたことも頭をよぎった。偶然にしてはできすぎている。
レドリュは被害者の男と面識はなかった。しかし、証拠は自分が犯人である可能性を示している。
レドリュは急いでホテルへと向かった。そして、部屋に戻るなり、自分の銃を取り出し、枕に発砲した。そして、そこから銃弾を取り出すと、犯人が残した銃弾と比較した。
これで、怖ろしい不安は確信に変わってしまった。