こうして組織を救う活躍までみせた「マーダーインク」は、裏社会で知らぬ者はいないほどの評判を集め、業績を伸ばし続けていた。
自分が興した会社が飛ぶ鳥を落とす勢いの業績を上げ、また組織にも大きく貢献できるまでの企業になったことに、社長のレプケは得意満面であった。
レプケは元から暴力好きで、力にものをいわせて周囲を従えるような男であったが、「マーダーインク」の成功で良い気になったのか、さらにその振る舞いは傍若無人なものになっていた。
自分がいかに優れているかを周囲に吹聴し、気に入らないことがあればその権威を傘に、高飛車な態度をとるようになった。次第に、レプケは長年のつきあいのある仲間からも疎まれるようになっていた。
こうした態度には、レプケが当時抱えていた不安も関係していたのかもしれない。レプケはニューヨークの州法違反と連邦法違反の容疑で、デューイやFBIから追われる存在になっていたのだ。
レプケはシュルツを追い込んだ国家権力の力に、ひどく怯えるようになっていた。その不安は日増しに抑えきれないものになり、自分に不利な証言をしそうな人間達を、配下の殺し屋たちを使って次々と殺していった。
それでも、不安が抑えられないレプケは、ルチアーノの元にどうしたら良いか相談しに行くことにした。