陸軍は早急に犯人を逮捕する必要に迫られていた。その渦中で、一人の男が逮捕された。逮捕されたのはユダヤ系フランス人のアルフレッド・ドレフュス大尉、陸軍の砲兵部隊に所属しDのイニシャルを持つ男であり、彼の筆跡が手紙の筆跡と一致したとするのが根拠だった。
当時のフランスはロスチャイルド家を中心とするユダヤ系の金融グループが作り出した投資ブームが破綻し、金融恐慌まで招いていた。そのため、フランス国内にはユダヤ人憎しとする風潮が充満していた。
ドレフュスがユダヤ系だという事が判明すると、反ユダヤ人の風潮はさらに過激になっていった。「ユダヤ人を八つ裂きにしろ」「裏切り者のユダヤ人を死刑にしろ」との声がいたるところで噴出した。今まで以上にユダヤ人に対する過激な差別が行われるようになった。
ドレフュスは優秀な成績で士官学校を卒業し、当時唯一のユダヤ系士官となったが、周囲に溶け込もうとはしなかったため、疎まれる存在でもあった。そのため彼を守ろうとする仲間は誰もいなかった。
ドレフュスに関する報道はますます加熱していった。ドレフュスがギャンブル好きであったとする報道やドイツ語に堪能であったこと、ドレフュスを犯人と決めつけるような記事が盛んに書き立てられた。