セント・ジェイムズ宮殿に到着したキャロラインは、広間でジョージが現れるのを緊張しながら待っていた。
しばらくしてジョージが姿を現せた。キャロラインは教えられた作法の通り、膝を曲げジョージに挨拶をした。ジョージもそれに答え抱擁を交わす。
しかし、ジョージはクルリと身を翻すと、すぐに広間を後にしてしまった。
そして、広間を辞したジョージはお付きの者に「ブランデーを持ってくるのだ」と告げた。
これは、王室としての差があるといえ、自ら花嫁候補に選んだ王室の女性に対し、あまりにも失礼な行為であった。
いくら素行の悪いジョージと言えども、普段このような行動を取ることはなかった。では、なぜジョージがこのような行為に及んだのか。一説にはキャロラインの体臭のためだとされている。
キャロラインは風呂嫌いで知られており、あまり風呂に入る習慣の無かった当時においても、その体臭はかなりのものだったと言われている。
そのため、潔癖症で風呂好きのジョージは、耐えきれず広間を後にしたのだという。
一方のキャロラインもジョージに不満を持っていた。ジョージは肖像画とかけ離れた容姿をしており、ぶくぶくと太っていた。さらに、ジョージの振る舞いにキャロラインはひどく傷つけられていた。
この日、晩餐会が行われるのだが、二人の側に控えていた従者の日記には、キャロラインはまるで身分をわきまえていないようなからかいの言葉を女官のジャージーに投げかけ、皇太子はそのことに大層不快な思いをしていたと書かれている。