しばらくすると、犯人が金を引出すために行動を開始した。しかも、犯人は以前のようにイギリス中を駆け回ってではなく、ロンドン近郊の自動支払機だけで現金を引き落とし始めた。犯人は偽の情報に騙され、手を抜くようになったのだ。
この犯人の動きを見て、フレミングは15台の自動支払い機に捜査員を張り込ませた。これはロンドン近郊の支払機のごく一部にしか過ぎなかった。
本来ならばロンドン近郊全ての支払機に張り込ませたいところではあるが、捜査員を限定したアジャンクール作戦のため、この数が限界だった。
犯人の裏をかくことには成功したものの、そのために捜査員の数を限定しなければならないのは大きな痛手でもあった。それに、アジャンクール作戦もいつ犯人に漏れるか分からない、作戦が有効な内に犯人を捕まえられるか、時間との戦いだった。
しかし、作戦は実行当初からトラブルに見舞われた。支払機の回線が誤って切断され、一部の支払機が使用できない状態になってしまったのだ。
回線が修復されるのを待っている時間は無い、フレミングは予定通り作戦を続行することに決めた。