エルキュール・ポアロやミス・マープルなど推理小説界屈指の名キャラクターを生みだし、ギネスブックに史上最高のベストセラー作家としてその名を刻むアガサ・クリスティー。
彼女が生み出したミステリーの数々はいまも多くの読書を魅了しているが、彼女自身の人生にも、いまだ解決されないミステリーが存在している。
それは、1926年に起きた11日間にわたる失踪事件である。
1926年12月3日、当時36歳のアガサ・クリスティーが突如失踪した。その日の夜9時45分頃にバークシャー州サニングデールにある自宅から車で出発し、そのまま消息を絶ったのである。
翌日の朝、自宅から車で1時間ほど離れた距離にあるニューランズ・コーナーの緩やかな丘の途中で、アガサの愛車が草むらに突っ込んだ状態で停車しているところを発見された。
車はヘッドライトが点灯したままで、ギアはニュートラルに入れられブレーキはかかっていない状態だった。
また、車の中には彼女の毛皮のコートや化粧道具、免許証などが残されていたが、昨夜から未明にかけては気温が低く、凍えるような寒さであったため、アガサがコートを置いたまま車を離れたと考えると、不自然なところがあった。