社長を失った「マーダーインク」だが、アナスタシアがトップとなり、その活動は依然として続いていた。だが、その企業活動は突如終わりを迎えることになる。
1940年、花形社員のエイブ・レルズがレッド・アルパートという若いギャングを殺害するが、この件を密告屋によって暴露され、レルズが逮捕されてしまったのだ。
レルズはこの時までに、すでに40回以上も逮捕されていた。今回の逮捕でもう死刑は免れない状態になっていた。
そこで、レルズは死刑から逃れるために、検事に司法取引を持ちかけた。検事はこのレルズの提案を受け入れ、話を聞いてみた。するとレルズは「マーダーインク」の存在について話だした。
それまで、幾多の殺人を行いながら、「マーダーインク」の存在は巧みに隠され、表だって知られていなかった。
そのため、検事はこの話にただただ驚くしかなかった。レルズは10日以上に渡って内幕を話し続け、その証言を書き留めたノートは25冊にも上ったという。
これで「マーダーインク」はマスコミも知る事態となり、アメリカ中が騒然となった。このレルズの密告に一番大きな衝撃を受けたのはルチアーノをはじめとする組織の幹部たちだった。
レルズが命惜しさに、組織が関与している事実を裁判の席上で証言するのは火を見るよりも明らかであった。もしそんな事態となれば、総動員された警察組織によって、マフィアは壊滅させられることだろう。
ルチアーノはすぐにコステロを刑務所に呼び、この危機を回避すべく作戦会議を開いた。
二人はすぐにレルズを殺すしかないという結論に達した。だが、警察の厳重な警護に守られているレルズを殺害するのは、どんな殺し屋でも難しかった。もし、殺し屋が捕まればそれこそ組織の関与が露見する。
作戦会議は大きな課題を残したままお開きとなり、コステロはこの不可能を可能にする作戦を考え続けた。