しばらくして、コステロはある名案を携えルチアーノの元を訪れ、こう言った。
「外部の人間には手が出せないのであれば、内部の人間にやらせるしかありませんぜ。警察にレルズを殺させましょうや」
1941年11月11日の早朝、レルズが保護されていたコニーアイランドのホテル、そこに泊まっていた何人かの宿泊客とスタッフは、「ドスン」という大きな物音を聞き、外に飛び出した。
従業員が調べたところ、大きな男の死体がテラスの屋根の上に転がっていた。7階の部屋にいたレルズが転落死したのだ。
レルズの部屋の窓から、シーツで作られた縄のようなものが垂れていたことから、警察はレルズが逃亡を図った際の事故だと判断した。
しかし、組織によって買収された警察官による犯行であることは間違いないだろう。
組織の幹部たちはレルズの死によって、組織崩壊の危機が去ったことを祝った。この時の乾杯の言葉は今も語り継がれるものとなっている。
「歌う(「密告する」の隠語でもある)ことはできても、空を飛ぶことはできなかった偉大なカナリア(「密告者」)、エイブ・レルズのために」