こうしたスキャンダルが噴出し、ハリウッドのあまりの退廃ぶりに、女性の権利団体や教会などからの激しい抗議の声がわき上がり、すさまじい反ハリウッド旋風が吹き荒れることになった。
そして、この非難はついにハリウッドに政治が介入する事態にまで発展していくのであった。
パラマウントのゼネラル・マネージャー、イートンはこうした事態をさけるために動いたはずだった。しかし、イートンの行動は逆の結果を招いていたのだ。
「イートンが動くからにはテイラーにはなにか隠しておきたいことがあるはずだ」新聞記者たちはそう察していた。
イートンがいくら証拠を握りつぶそうが関係なかった。当時はハリウッドに対する凄まじいまでの批判が噴出していたため、映画関係者のゴシップは、記事にすればそのほとんどが信じられてしまうような状況になっていた。
ありえそうな話であれば、真実などどうでも良く、むしろ、その話がスキャンダラスな内容かどうかの方が重要で、過激な内容であればあるほど、新聞の発行部数を伸ばす記事になった。
つまり、前述したテイラーに関するゴシップの数々はそのほとんどがねつ造されたものであったのだ。
クロゼットから多数の女性の下着といかがわしい写真が見つかったとする話も、元をただせば女性物のバスローブが発見されたという小さな発見に過ぎなかった。
それが、新聞王ウィリアム・ハーストが傘下に持つ、タブロイド紙の記者達を中心に尾ひれがつけられていき、あのような記事が生まれていったのであった。
本当のテイラーは新聞にあのような書かれ方をする人間ではなかった。むしろ紳士的でこうしたゴシップとは無縁の人物だったのだ。