こうした疑惑が再び浮上したことから、シェルビーに対する大陪審(起訴を行うかどうかを決める事前審問)が開かれることになった。
ここで、シェルビーの元秘書がミンターから聞いた話としてあることを証言した。それは、ミンターがテイラーと電話で話をしていた時のことで、ミンターが駆け落ちしてほしいと持ちかけたところ、その話をシェルビーに聞かれていたとする話であった。これは、シェルビーがテイラーを殺害する動機になったとも考えられる話である。
さらに、シェルビーの元運転手はミンターが再び自殺を企てないように、あの38口径の銃の弾を処分するように頼まれたのだが、その弾を地下室に隠したと証言した。
調べてみたところ、確かに銃弾は地下室から発見され、その銃弾はテイラーを死に至らしめたものと同じ種類のものであったことが明らかになった。
こうした様々な証言や発見があったにも関わらず、シェルビーは起訴されなかった。状況証拠が多く、確たる証拠があがらなかったことも事実ではあるが、起訴にもちこまれても良さそうな状況に思える。
この時もシェルビーは賄賂を使って逃げおおせたのか、それとも前任の検事たちの不祥事をこれ以上表沙汰にしたくなかったため、検事が起訴を封じ込めたのか、そうした裏工作や思惑が絡んでいた可能性も考えられているが、結局、これ以後は事件に関する法廷は開かれることはなかった。
これほどまでにアメリカ中の関心を集め、また、疑わしい人物がいたにも関わらず、事件はこうして幕を閉じたのであった。
シェルビーは、事件が発生したことで沸き起こったスキャンダルでミンターが女優生命を絶たれたことで、何よりも大事な商品を失ったが、85歳という長寿を全うして死亡した。
娘のミンターは、散々に金を絞り取られたあげく、ハリウッドを去る事になったが、ある富豪と結婚し裕福な生活を送った。その後、女優だった面影もないほどに太り、晩年は精神を病んでいたとも言われている。そして、脳梗塞が元で82歳でこの世を去った。
ハリウッドから去る事になったもう一人の女優メイベル・ノーマンドは、ハリウッドへ戻るため奮闘していたが、彼女の運転手が巻き起こした銃撃騒動で、再び不幸な形でスポットライト浴び、2度とハリウッドに戻ることはなかった。その後、結核を患い、37歳の若さで死去した。