レドリュは当時まだ35歳であったが、この歳にして名刑事と呼ばれたのには理由があった。
それはレドリュが行っていた捜査手法にある。レドリュは犯人が残した証拠や聞き込みなどによって得た情報などから、犯人の性格や行動の習性などを割り出し、自分を犯人と一体化させ、犯人だったらどのような行動を取るかを綿密にシュミレーションし、捜査を行っていた。
当時の多くの刑事もこのような視点で捜査は行っていたことだろう。しかし、レドリュはこの手法において、抜きん出た才能を持っていた。
レドリュによって構築された犯人像はほとんど狂いがなかった。そうして事件の真実を見抜き、いくつもの難事件を解決させてきたのである。
だが、そうして捜査手法と生真面目な性格が災いしたのか、レドリュは次第に激しく疲労するようになった。捜査活動を行う鋭気を養うため、休暇を取っていた。
彼が休暇の地に選んでいたのは、事件現場にほど近いルアーブルだった。殺人事件が専門で、さらに近場にいるので都合も良かったため、レドリュに声がかかったのであった。