カナダ北岸を目指し進んでいた隊員達も、すでに40人ほどしか残っていなかった。この頃にはもう食料も全てなくなり、鉛のように重い足を引きずりながら、ただ無心で進んでいる状態だった。
それでも7月に入り、ようやくカナダに上陸した。しかし、そこもただ白い景色が広がっているだけで、氷の海と大差はなく、人の姿はおろか口に出来る物など何も見あたらなかった。いまだ希望が見えない状況のなか、次々と隊員達は死んでいった。
それは、話し合いの上で行われたものだったのか、それとも、誰かがふいにその口火を切ったのか、今となってわからないが、まだ生き残っている隊員達は死んだ者の肉を切り、それを口に運んだ。
そうした非情なまでの決断を強いられた隊員達は、ようやくグレイト・フィッシュ・リバーの河口付近に到達したが、生き残っている隊員も、もうわずかばかりしかいなかった。
その隊員達も一人減り、二人減り、そうしてついに最後の隊員も、雪の中に顔をうずめたまま動かなくなった。
これがフランクリン探検隊が辿った末路であった。
それはあまりにも悲惨なものであったが、マクントリック隊の調査でフランクリン隊は史上初めて北西航路の発見に成功していたことが明らかになった(ただし、あくまでも航路の発見であって完全な渡航が成功した訳ではない)。