彼等はこうした事件が起きる理由を解明するために実験を行った。
それは他人が緊急事態に陥ったときに、それを見聞きした人間達はどのような行動を取るのかというもので、様々な状況を使って行われることになった。
その中から、女性が怪我をしたという状況の実験を確認してみよう。
まず、商品の市場調査のためという偽の目的で、被験者となる男子大学生たちが集められた。彼等は出身や年齢などの条件を付けず、ランダムな条件のもとで選ばれた学生たちだった。
市場調査への参加を同意した学生たちは、調査会社の事務所に偽装された部屋に集められた。
この事務所は2つの部屋で構成されていて、一方は机と椅子が複数あるだけの小さな部屋、もう一方は調査会社の事務所という間取りで、この二つの部屋を仕切るのは簡単なアコーディオンカーテンだけである。
集められた被験者たちは、まず女性スタッフによる市場調査の説明を受け、アンケート用紙に記入するよう求められる。
そして、被験者たちが部屋でアンケートを記入しているところで、女性スタッフは用があるとして事務所に向かう。すると、事務所の方から、女性が高いところにある物を、椅子を使って取ろうとしている物音が聞こえてくる。
しかし、女性は失敗して、椅子から落ちてしまう。椅子が倒れる音や「痛い! 足が動かないわ! 足がはさまってしまったけど物をどかせないわ!」という声が聞こえてくる。
この時にどれくらいの被験者たちが女性を助けるために行動するのかが調べられた。
被験者1人きり、被験者1人と無関心を装うさくらの人間が1人、面識のない同士の被験者2人、友人同士の被験者2人という4つのグループに分け、それぞれのグループで約10~20組の実験が行われた。