所轄する警察署に応援要請が入り、すぐに署内の殺人事件担当の警察官のほとんどが動員され、現場検証が行われた。
ベニーの遺体が置かれた現場からは、2本のサーベルが発見されたが、遺体の傷跡とは合致せず、また使われた形跡もなかったことから、犯行に使われた凶器ではないようだった。
ベニー以外の家族はみな寝間着を着用していた状態で死亡していたことから、深夜に行われた犯行であることが推測された。
さらに事務所を調べていくと、いくつかの不可解なものが見つかった。
ベニーの遺体があった事務所には、何故か棺おけが置かれていた。棺おけの中にはフレームに収められた子供の写真が入れられていたが、殺害されたエヴァンジェリスタ家の子供達のものではなかった。
また、本棚からは何冊もの奇妙な本が発見された。それは「オカルト科学が発見した世界最古の歴史」と題された本であった。調べてみると、どうやらベニーが自費出版して出した本のようだった。
それは、聖書に書かれている事柄を、血塗られた歴史として解釈し直したような内容の本で、神の誕生に始まり、キリストの復活などを経て、ノアの物語の前で終わっていた。
この本は全4巻の本となる予定だったが、資金不足になったのか1巻までしか印刷されていないようだった。
本の序文には、エヴァンジェリスタの頭の中に突如聞こえるようになった「声」に導かれ、20年にわたって記された書物なのだと書かれていた。