リンカーンは犯行の動機を明確に示した。
見てきたようにリジーとアビーの間には確執があった。
父親の寵愛を受けて育ったリジーと姉のエマは後妻のアビーの事をいたく嫌っていた。アンドリューはこの問題に悩み、密かに家の所有権をアビーに分け与えた。
これは、当時既に70歳を超えていたアンドリューが、自分が死んだあと、きっとアビーは子供達に家から放り出されてしまうと考え、講じた処置だったのだろう。
しかし、この内密に進められた財産分与はリジーの知ることとなった。これにリジーは烈火のごとく怒った。
アンドリューはリジーにも相応の金を分け与えることで、なんとか納得させた。
この問題のあと、リジーはアビーの事を「お母さん」とは呼ばず、「ミセス・ボーデン」と呼ぶようになった。
ここまでは、裁判の中でも明らかになっていた部分であった。リンカーンは事件当時、もう一つの財産分与が行われようとしていたことを明らかにした。