レドリュはその日、捜査に追われ、犠牲にしてきた睡眠時間を取り戻すかのように、12時間以上も眠りこけていた。
昨晩は寒かったため、靴下を履いたまま寝ていたのだが、寝ぼけてバスルームにでも行ったのか、いつのまにか靴下を濡らしていたのにも気づかないほどであった。
上司からの連絡を受けたレドリュはすぐに捜査に当たることにした。体を休めるために取った休暇だとはいえ、殺人事件と聞いてはやはり刑事としての血が騒ぐ。レドリュは地元警察と落ち合うため、ホテルをあとにした。
地元警察と落ち合ったレドリュは、まず事件のあらましを確認した。
被害者のアンドレ・モネは会社を経営していたものの、規模も小さくたいして資産を持っているわけでもなかった。
また、人柄的にも敵をつくるような人物でもなかった。金目当てや怨恨の可能性は低いように思われた。
事件に使われた銃弾から、凶器はルガーであることが特定されていた。しかし、ルガーは当時のフランスの警察も使用していた銃で、広く普及していたものでもあったため、ここから犯人を割り出すのは難しかった。
次に、もう一つの証拠である足跡を確認するため、事件現場となったサンタドレスの海外へと向かった。