夢遊病とは、一般的に精神は睡眠状態にあるにも関わらず、体は覚醒している状態を指す。
そのため、気づいてみると自分が何をしていたのかまるでわからないのである。
普通は部屋の中を歩き回ったり、夜中に勤務先に向かってしまったりなど、誰かに危害を加えたりしない場合の方が圧倒的に多い。夢遊病者による殺人事件は、非常に希なケースなのである。
レドリュ事件を深く知るためにも、夢遊病者による殺人事件の中から、2つの例を挙げてみよう。
1963年にアメリカのケンタッキー州に住む、ある一家で起きた事件で次のようなケースがある。
ある日の夜、ベッドで就寝していたその家の16歳の娘、ジョー=アンはうつろな表情で起き上がると、父親が所有している銃を手に取った。
そして、就寝中の家族の部屋を回った。まず弟の部屋に行き、寝ている弟の頭部を銃で撃った。
次に両親の寝室に入ると、父親に6発の銃弾を浴びせ、さらに母親も撃った。
父と弟が死亡し母親も重傷を負う事態となったが、ジョー=アンが家族を殺傷する理由は存在しなかった。精神分析の結果、事件時に夢遊病を発症していた事が明らかになった。
夢遊病の患者はこのような行動を取っている間に、一体何を見ているのだろうか。この事件の場合、次のようなことがわかっている。
ジョー=アンはその日、怖ろしい形相をした化け物のような男が家の中にいることに気がついた。
その男は家の中を動き回り始めた。この怖ろしい男をなんとかとめないと、家族が殺されると思った。
そのため、父親の銃を手に取り、家族の部屋を回って男を撃っていたのだという。