このころ、ドレフュス派が思いもつかない所から衝撃的な発見があった。
陸軍参謀本部に配属されたばかりの新任士官キュイニェ大尉がドレフュス事件に関する書類の再調査を行ったところ、陸相のカベニャックがドレフュス有罪の決定的根拠としたドレフュスが自白したと書かれた書類に、偽造された痕跡があることを発見したのだ。
さらに、偽造した人物の名前まで突き止めることができた。その人物とはアンリであった。
大演説の根拠にした書類に偽造の可能性があったことにカベニャックは愕然とした。カベニャック自らアンリを尋問したところ、偽造を行ったことを告白した。アンリは逮捕され、すぐに収容所に送られることになった。
翌日、アンリの監房を訪れた看守は衝撃的な現場を目撃する。アンリは喉を切り裂いた状態で死亡していたのである。そばには剃刀が残されていた。
アンリの死は自殺と断定された。しかし、自殺とするには疑わしい点もあった。アンリが剃刀を持ち込む事など不可能なはずだった。暗殺された可能性も否定できなかった。