事件発生から1年以上が経過した1995年12月21日、16人の人間が失踪していることがわかり、そのニュースがヨーロッパ中を駆けめぐった。
彼等はみな「太陽寺院」の信者であり、同じ日に行方がわからなくなっていた。
当初は教団の本部が置かれ、集団死亡事件が起きたスイスに向かったことが考えられたため、ジュネーブをはじめとするスイスの教団施設が調べられることになった。
だが、なんの手がかりも得られず、彼等が失踪した日からすでに1週間あまりが経過しようとしていた。
失踪した人物の中には、1960年に開催された冬季オリンピックのアルペンスキー競技で金メダルを獲得したフランスの人気スキーヤー、ジャン・ヴュアルネの妻と子供や、現職の警察官二人(そのうちの1人は刑事だった)なども含まれており、失踪者の点からも大きな注目が集まることになった。
12月22日、この日フランスのヴェルコール高原では、ヘリと大量の捜査員による、陸と空、双方からの捜索活動が行われていた。この付近にある村に4台の車が放置されたままになっているとの通報があり、16人の失踪との関連が考えられたのだ。
しかし、失踪者の行方はつかめず捜索は困難を極めた。だが、上空を飛行していたヘリが、地元では「悪魔の井戸」と呼ばれていた炭焼き場で、大きな黒い輪のようなものを発見したことで事態は動き出した。
捜査員が現場に急行してみると、焼けこげた16体の死体が頭を外側にして、輪になって並べられていた。
16体全てに銃創があり、これが命を奪い、死後に焼かれていたようだった。16体の死体のうち2体だけ離れた場所に置かれていた。
この2人が実行犯で14人を撃ち殺して火を放ち、自分たちの体にも火を付けたあとで自殺したものと思われた。1人は前述した刑事であり、もう1人は建築家の男であった。
ヴュアルネの妻と子供、そしてもう1人の警察官を含む全ての失踪者がここで死亡していたのである。
全てが終わったかに思われた事件で再び多数の死亡者がでたことで、ヨーロッパに激震が走ることになった。だが、この事件が最後ではなかった。