法案の審議は3ヶ月にわたって行われ、キャロラインも貴族院に赴き、審議を傍聴したが、キャロラインが貴族院におもむく際には、多くの群衆に囲まれ、励ましの声を掛けられた。
さらに、裁判が行われる日には、議会周辺はキャロラインを応援しようとする民衆が取り囲む大騒ぎの事態となった。
これに対処するため、政府は2重の防護柵を用意しなければならないほどであった。
11月10日、法案の採択が行われた。投票の結果は108対99で法案の賛成票が過半数を占める結果となった。つまり、キャロラインに不義があったことが認められる結果になったのだ。
明らかに王妃側に分があるかと思われた裁判がこのような結果になったのには理由があった。
審議が行われた貴族院は貴族達によって構成された議会で、国王ジョージと関係を持つ者が多かった。そのために、このような結果を生んだのであった。
この投票結果を受けて、首相のリヴァプールは頭を悩ませることになった。貴族院でここまで接戦になった法案を通せば、民衆たちがどのような行動に出るかは目に見えていた。最悪の場合、国内は内乱状態にまでなることも予想された。
そのため、リヴァプールは考え抜いた結果、法案を延期させたのち、廃案させる案を議会に提出することにした。
この案は賛成多数によって可決され、事実上の廃案が決定した。
つまり、貴族院ではキャロラインは不義があったことは認められたが、離婚は否定される形になったのだ。王妃派・国王派それぞれに分をもたせる決着であった。
民衆はこの結果に歓喜することになった。この決定が下された日、キャロラインが議会から家路に向かう道には多くの民衆が長い列を作り、祝福の声が贈られ続けた。