事件の日、アンドリューが所有していた農場の名義がアビーの名前に書き換えられる予定だったのだ。
この農場はジョン・モースが管理しているもので、ジョンはこのために前日からボーデン家に泊まりこんでいた。そして、リジーはこの農場の相続についても知っていたという。
家の相続の時に、あれほどの怒りを見せたリジーである。再び行われようとしているアビーへの財産分与にどれほど憤激したことであろうか。
さらに、実はリジーには脳に疾患があり、たびたび発作が起きていた。この発作が起きると夢遊病のように、無意識のうちに行動してしまうことがあったのだという。そして、その発作は月経中に起きることが多かった。
事件の日、まさにリジーは月経中であった。そこに、その年の最高気温を記録した猛暑が追い打ちをかける。
この全ての悪条件が揃い、リジーは朦朧とする意識の中、斧を手にしてアビーを殺害してしまった。
意識を取り戻したリジーは、あまりにも怖ろしい犯行の様子を父には決して見せてはならないと考え、寝ている父にも同じように斧をふるった。
これが、ヴィクトリア・リンカーンが提示した仮説であった。